六名学区で子ども食堂を営む北村さん。
普段は、建築関係のお仕事をしながら1男1女を育てているパワフルなママです。2018年4月にココカラ食堂をスタートし、ボランティアさんの力を借りながら毎回70食ほどの食事を地域の親子にふるまっています。
私がお邪魔したのは、コロナ騒動が少し収まった7月。
会場では、お腹いっぱいになった子どもたちが走り回り、その姿を微笑ましく、お母さんやボランティアさんが見守っていました。赤ちゃん、幼児、小学生や制服姿の高校生。学生のボランティアさんに、子育てを終えた世代のお母さんたち。ここにはまさに食事を真ん中に置いた多世代のコミュニティがありました。
子ども食堂 ココカラをはじめよう!と思ったきっかけはなんですか?
2015年ごろに大阪のこども食堂の話を話を聞いたのが、「子ども食堂」と私の出会いです。元々地域福祉には非常に興味があったので、いろいろ調べたりして、自分にもできないか?と考えながら月日が過ぎていたところに、2017年に社協さんがこども食堂の講演会を開催すると聞き足を運び、その会場で「私やります!!」と即決です。笑
お話くださったのが、私が興味をもつきっかけとなった大阪の子ども食堂さんで、食堂はもちろんのこと他にもされている色んな活動がとっても素敵ですごく共感し、まずは私も子ども食堂やろう!と。
場所とか食材とかは段取りできそうだったんですか?
いいえ全然。何もなかったけど、やる!って決めてました。そこから、場所探しにも紆余曲折ありましたが、叔父が場所を提供してくれることになり、食材も他のこども食堂さんとも連携をとりながら社協さんもすごくよく手助けしてくださり、無事にスタートすることになりました。
でも第一回はおにぎり食堂だったんですよ。食材もどれだけ手配できるかまだ分からなかったし、資金が尽きて続けられなくなることだけは避けたかったんで、慎重にスタートしました。でも今では、ご協力いただける方もどんどん増えて毎回肉も野菜も入った食事が準備できるようになりました。
もともと、やりたかったのは食事を提供するということだったんでしょうか?
いえ。どちらかというと、食事ではなくて「場」ですね。
当時長男が2年生で長女が年少だったのですが、長男は帰宅後に遊ぶ友達がいなくて一人でいることが多かったんです。それは、友達がいないわけではなくて、みんな児童育成センターか習い事に行ってしまうので、街に子どもがいないんです。とにかくそれがすごく残念だなあと感じていました。
小学校低学年の頃って、放課後に近所で他愛もない遊びをするのが楽しかったし、この年になってもすごく記憶に残っていませんか。そういういわゆる「遊び」ができないことが残念だなあって。
なので、月に1回では全然足りないと思うけど、それでもこども食堂のような場がつくれて、そこに仲間となる子どもたちが集まればいい遊び場になるんじゃないかなあと思ったんです。
なるほど。では、ココカラ食堂は食べるだけでなく遊ぶ場所なんですね。
そうそう。うちは他のこども食堂さんのようなお店や民家ではなく、道場なので子どもたちは館内とすぐ向かいにある公園を使ってとにかく走り回って遊んでいます。
おもちゃはあえて置かないようにしてますが、靴下を丸めてボールにしたり、毎回感心するような遊びを考えて過ごしています。そうしていたら、ボランティアさんの中からリースづくりをやってくれる人や、割りばし鉄砲を作ってくれる人が出てきたりして、子どもたちもすごく楽しそうにやっています。
マナーがどうなんだとか、危険ではないかとか、危惧すればきりがないですが、この場ぐらい子どもたちが自由にありのままに過ごしてくれたら私はそれでいいと思っているんです。
お母さんたちの様子はどうですか。
友達同士で来る人は意外と少ないんですが、テーブルが同じになった方同士とかで話がはずんでいる様子です。発達のこととか、学校のこととか同じような年ごろの母親同士は自然と話は通じますよね。
ある程度大きくなると、子どもが遊んでいる様子をお母さんが見る機会もなかなかなくなってくるので、我が子がこんなに楽しそうに遊んでるのをみたのがすごく久しぶり!なんて言ってくれた方もいました。
また、以前お手伝いいただいた保護者の方が、ここに来る大人は誰もスマホを触っていない。こんな場所久々だと言っていました。それを聞いて以来意識して見ていますが、確かにそうなんです。今どきは家族で外食に行ったって、それぞれにスマホを見ている姿をよく見ますが、ここではみんなだれかと会話を楽しんでいます。
SNSやメールでも会話は確かにできるけど、やっぱり会って話を聞いてほしい!そういう思いって大人も子どもも同じようにあるんだと思います。日常に追われてそれを無意識に押し殺しているのは大人もこどもも一緒。まずは大人同士でその欲求を満たしあうことができれば、家庭ではお子さんの話をじっくり聞くことができるようになるかもしれないなあと感じています。
子ども食堂というと、貧困支援というイメージがまだまだありますが、そういった思いもあるのでしょうか。
もちろんあります。そういった方の助けになれるならそれほどうれしいことはありません。
でも、経済的な苦しさを抱えていなくても子育てに悩んでいる人や、忙しくて食事作りがままならない方はたくさんいるし、そいうった家庭で様々な思いを抱えたり我慢している子どもたちもいると思うんです。
だから、貧困に限らずだれでも来ていい場所でありたいと思っています。
でも、こうやって場を開いていれば貧困で悩む方やその子どももやってきます。そこで、なんらかつながることができて私にできることがあればもちろんしますし、しかるべき機関にお繋ぎするという事も望まれればやります。
あとは、今は困っていなくても、もし困ったことがあった時に、こういう地域とつながる場があれば、誰かが気が付いてあげられたり、助けを呼べたりするのかもしれないとは思っています。
これからの展望など教えてください。
とにかく「あり続けること」ですね。
行けばこの場があるという状態にしておきたいと思っています。
最近では、いろんなところから視察に来てくださったり、学校からの学生ボランティアさんも来てくれるようになりました。でも、なにより嬉しいのは自主的に高校生の子がボランティアにきてくれること。こうやって興味を持ってくれる子につなぎながらこの場所を続けていきたいと思います。
また、そういった対応にも追われて現場になかなかいられないのが最近の悩みです。個人的には、頼めるところは頼んでもっと現場にいられるようになりたいと思っています。
子どもへの言葉かけ一つにしても、子どもから学ぶところはとにかく多い。現場で子どもたちに混ざって、私もまだまだ学ばせてもらいたいと思っています。
北村さんが行っている活動
子ども食堂
【インタビュー後記】
私の大好きな友人でもある北村さん。会話の節々にいつも強くて暖かい母性を感じています。
そんな彼女が「子ども食堂」をやっているのはすごく納得。
会場にお邪魔した際、帰りの道中で6歳の娘が「あー、今日のカレー美味しかったー。次はいつなのー?」と言いました。
会場では、お友達と風船の取り合いになって涙も流したし、見守りのおじさんに注意されたりもしていたのに。それでも、この場所の心地よさを子どもはちゃんと分かったのでしょう。
ここで過ごした記憶はきっと子どもたちの心に残っていく。娘の感想を聞きながら、私はそう確認しています。