お店の前に立つと、ガラスの向こうにはいつも季節の絵本がずらりと並んでいます。そして、木の引き戸をあけると目に飛び込んでくるのは、ぎっしりと並べられた絵本とかわいらしい手書きのポップ。目を奪われていると、カウンターから店主の浅井さんが温かな笑顔でやさしい声をかけてくださいます。
その声に導かれて靴を脱いで店内に入ると、奥には読み聞かせ会のためのスペースがあります。普段はおもちゃが置かれており、子どもたちが自由に遊んだり、選んだ本をそこで少し読むこともできます。
浅井さんがこのお店をはじめたのは25年前。今の場所ではなく、籠田公園の近くで開店されました。その後建物の耐震性などの問題から今の場所へ移転されて14年になります。
独身時代から絵本の世界に惹かれ「子どもの本の研究会」という岡崎にある研究会に発足当時から参加され、 自宅近くの公民館や市民ホームで文庫活動(絵本の貸出と読み聞かせ会)をしていました。 その後ご結婚され子育ても経験。ますます絵本の良さや絵本の力を感じる経験をされていったそうです。
特に、 浅井さん自身が子育てする中で感じたのは「絵本は親子のコミュニケーションにとってもいい」ということ。ある程度大きくなっても、小さな時から続けている絵本の習慣を続けることで、ふと出てくる絵本の感想などからその時のその子の心情を知り母として最善のケアをするのに役立ったと言います。
「絵本で言葉を覚えるとか、何かができるようになるということよりも、お母さんの声をたくさん聴かせてあげることでこどもたちは必ず喜ぶし、親子の中にいい関係ができていきます。難しく考えず、ママが好きな本をきかせてあげるといいと思います。」とやさしくアドバイスしてくださいました。
そんな風に子育てをしながら関わり続けていた研究会では、岡崎には絵本の専門店がなく、メンバーと絵本を求めて市外まで足を運ぶこともしばしばありました。その中で「岡崎にも絵本専門店があったらいいのになあ。」という仲間との共通の想いと、さまざまなご縁が重なりお子さんが5年生の時にお店を開店することになりました。
開店当時の想いは「人が集まる場所にしたい。」ということ。研究会のメンバーに読み聞かせを依頼し頻繁に行っていました。今でも週に1回月曜日の夕方に読み聞かせ会を続けています。また、今でもその当時に知り合ったメンバーがお店をお手伝いしてくださっており、スタッフの方も浅井さん同様絵本が大好きな方ばかりです。
このお店に並んでいる本は、すべて浅井さんが選書をされています。ご自身の経験からいいと思ったもの、研究会の仲間から聞いた話を参考に並べているもの、買ってくださったお客様がすごくよかったと言ってくれたものなど、1冊1冊手に取ると、いろんな人の顔や言葉が浮かぶそうです。
お客さんからおすすめの本を聞かれると、それらを思い出しながら、年齢や性格などを聞いてお勧めする本を選んでいます。
絵本選びに迷ったり、どんな絵本があるんだろう?そんな風に迷ったときにはぜひ相談してみてください。りぶらも近くにあるので、お散歩しながら絵本のはしごをしてみるのもおすすめです。
【取材後記】
今ではたくさんの場所で読み聞かせ会が催されるようになり、さらに絵本もインターネットなどでどこでも買えるようになりました。それでも、このお店には行く価値があると取材した私は思っています。浅井さんのやさしいお話にほっとし、知らなかった絵本と出会うことができる。さらには、ストーリーをはなすと、ズバリタイトルを思い出してくれることもある浅井さん。スマホの検索だけでは決してたどり着くことのできない絵本との出会いや、ほっとできる時間がこのお店にはあるような気がしています。
たくさんの方に支えられ、たくさんの想いを受け止めていらっしゃる浅井さんの人柄に今回の取材でますますファンになってしまいました。
子どもの本専門店
営業時間:10:00~18:00
定休日:水
住所:岡崎市材木町3-2
TEL:0564-26-3083
駐車場:お店の前と近隣にあります。
HP:ちいさいおうち